『田園の詩』NO.124 「国東の鬼会」 (2001.2.13)


 昨日のこと、「今日は旧正月7日、『修正鬼会』の日だ」と気が付いたものの「何度も行って
いるから今年はいいか…」と諦めて仕事をしていたら、友達から「連れて行ってくれ」と電話
がかかりました。

 「真夜中になるので防寒の用意は充分に。服は焼け焦げても良いものを」とアドバイスして、
未経験の友達を更に2名誘って、豊後高田市の天念寺に出かけました。 

 当地、国東半島は、今から約1200年ほど前の平安時代に全域にわたって膨大な寺院集団
が形成されました。言い伝えでは、仁聞(にんもん)菩薩が開いたとされ、全寺院を総称して
「六郷満山」といいます。『修正鬼会』はこの満山の天台僧を集めて、五穀豊穣、無病息災
を願って始められたといわれています。


      
     10年毎には、『六郷満山峰入り』の行が行われます。今年がその年でした。天台宗の
      僧侶と、一般募集した在家信者(総勢約200名)が、3月30日から4月4日の間、国東
      半島の寺院・霊場・峰々を約150キロ歩きます。写真は、宇佐神宮の奥の院・御許山
      (おもとさん)での開白護摩(かいびゃくごま)の様子です。 (10.3.30写)

      

 国東半島の祭りの代表格ともいうべき『修正鬼会』は正月法要と鬼祭りが一緒になった
ような行事で、以前は満山の各寺院で行われていたようですが、現在は3寺院だけになって
います。

 さて、現地に着いたのが夜の7時前、間もなくホラ貝の合図で鬼の介添役の若衆が川に
入り身を清めるところから祭りが始まります。(私達が見ることができるのはここから)次に、
3本の大松明の献納、僧侶による読経や舞があり、最後(10時頃)に赤と黒の荒鬼が登場
してクライマックスを迎えます。

 この荒鬼が手に松明を持って、見物客で一杯になった狭い講堂の中を暴れ回ります。
堂内は騒然となるものの、火の粉を浴びたり松明で叩かれると健康で過ごせるといわれ、
人々は進んで鬼に近寄ります。友達3人も喜々として叩かれていました。

 節分には全国的に鬼が登場し、邪悪な者として退散させる対象になっていますが、国東の
人々は鬼は仏の化身と信じています。その現れが鬼の姿にあると私は思います。まず、鬼の
役目は僧侶です。そして、鬼面はすっぽり被らず頭の上に乗せた状態にします。それ故、
鬼と仏(僧)の顔が同時にそこにあるのです。

 鬼に人間の邪悪な心を追い払ってもらう――これが国東の『鬼会』なのです。
                             (住職・筆工)

[ 修正鬼会の話題は⇒(NO.94) にもあります。

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